太陽がリングの形になるという珍しい日食
何日か前の夕暮れ時
我が家も他の家ほどでもないけれど持ち上がった
特殊な眼鏡がほしいというわたしに彼はいらないよと言い放つ
それでも夜には
目覚ましをいつもより早くセットして
眠い目をこすりながら見上げた我が家のアパートからの朝空は曇ってた
いつも起きはじめる時間
水やりをする彼が明るさを取り戻し始めた空を見ながらわたしを呼ぶ
彼がもつ紙から紙に映り出された影は三日月に見える
わたしも紙を持って彼のまねをする
けれど何も映し出されない
彼は手品のようにもう一度三日月の影を見せてくれる
この紙には小さな穴が開いているんだよ
そしてこれが今の太陽の形
わたしはもう一度と紙越しの三日月をせがむと彼はもう充分でしょうとほんのり笑う
そして木漏れ日の中にうつる影がきれいなんだって
と静かに教えてくれた
確かに三日月の影だけでたっぷりすぎるほどの穏やかな時として刻まれた
夜になると
彼は眠りにつく前
新しい情報をくれる
今度は太陽を金星が横切るらしいよ
けれど今度は眼鏡が必要かもね、金星は小さいから
そんな彼にいつもわたしは微笑むしかない